幹部候補育成の3つのポイント
アメリカ企業の後継者育成計画に対する関心の高まり
1.計画的な取り組み
計画的な取り組みは、アメリカの有力企業が行っている後継者育成計画(Succession Plan)に学ぶことができるでしょう。後継者育成計画は、幹部候補を人選して、体系的な研修プログラムに基づき、次世代のエグゼブティブを長期的に育成することを目的にしています。
後継者育成計画の先進企業にGE(ゼネラル・エレクトリック)が挙げられます。GEにおけるハイクラスの人材育成は、独自の価値観であるGEグロスバリューに基づき、クリントビルにある自社のリーダーシップ研究所で体系的な研修プログラムを中心に行われています。
GE出身の経営者に、LIXILグループの藤森義明社長がいるのをご存知でしょうか。藤森社長は、同じGE出身の八木洋介副社長と二人三脚でグループ内の人材育成に取り組んでおり、LIXILグループの取り組みの影響もあって、最近はアメリカ流の後継者育成計画に対する関心が高まってきています。
そのことは、労務行政研究所が行った人事戦略に関するアンケートで確認することができます。アンケート結果では、後継者育成計画を「行っており、今後はさらに強化したい」という回答が20.2%、「現在は行っていないが、今後は行いたい」が61.3%となっており、80%以上の企業が前向きな姿勢を見せているのが特徴的です。
2.育成効果の検証
GEでは後継者育成計画の効果を、業績とGEグロスバリューの実践の2つの軸で検証しており、外部志向、明確でわかりやすい思考、想像力と勇気、包容力、専門性の5つの要素があります。このGEグロスバリューの実践を評価するのは、直属の上司です。そのためハイクラスの人材のみならず、管理職に昇格するには、GEグロスバリューを理解すること、自ら実践すること、部下を指導することが必要になります。つまり中間管理職は、GEグロスバリューに基づいたOJT能力が期待されるのです。
日立化成などが、管理職のOJT能力を組織的に高めるためにコーチ役の育成に取り組んでいます。しかし、こうした取り組みを行っている企業は、まだ少数派です。幹部育成の効果を検証すること、さらにその効果を高めるためには、中間管理職のOJT能力向上が必要不可欠です。具体的には、成長の機会を提供できる担当業務の決定、業務遂行段階の指導の2つの役割が、中間管理職には期待されます。
3.価値観に基づく人選
後継者育成計画の出発点が、幹部候補の人選であることから、育成対象者の選び方が重要であることがわかります。できれば20代に、将来性を重視して人選することで、長期的に育成に取り組みたいところです。そのためには、候補者の価値観を把握することが何より重要です。
アメリカの心理学者エドガー・シャイン氏は個人の価値観を8つに分類しています。8つの価値観とは専門性、組織運営、起業家的創造性、安定、自律と独立、社会貢献、ライフバランス、挑戦です。
現在の20代は、ゆとり世代と呼ばれ、メンタル面の課題が指摘されていますが、専門性や挑戦など、各社が期待する幹部像に合致した価値観を持つ対象者を選ぶことが必要となるでしょう。