先行するドイツのインダストリー4.0
IoTの先進事例としてのインダストリー4.0
ITの活用において、もののインターネット化と言われている、Internet of Things(以下、IoTと略記)が注目されています。IoTとは、身のまわりの様々な物に通信機能を持たせることで自動制御や遠隔操作などを可能にする仕組みのことです。IoTの活用が進んでいる分野に製造業がありますが、その先進事例がドイツにおけるインダストリー4.0という取り組みです。
インダストリー4.0は2010年にドイツで閣議決定された「ハイテク戦略2020」で構想が示され、第4次産業革命という意味合いで命名されました。産業革命は第1次が蒸気機関、第2次が大量生産、第3次がコンピュータ-と言われています。インダストリー4.0はIoTを駆使することで、製造業とインターネットを融合することを目指しています。ドイツは2013年4月に有力企業と業界団体を中心に「インダストリー4.0プラットフォーム」という事務局を立ち上げました。
インダストリー4.0の特徴
インダストリー4.0の実像は、産業見本市のハノーバー・メッセ2013で明らかになりました。この見本市でデモ工場が出展され、セミナーによる普及啓蒙も行われました。
インダストリー4.0の特徴は以下の4つのキーワードで説明することができます。
- 自律性
- 最適化
- 柔軟性
- 生産性
この4つこのキーワードを実現するために、サイバー・フィジカル・システム(以下、CPSと略記)と呼ばれているシミュレーションが使われています。ドイツには伝統的なマイスター制度による技術的な蓄積があります。マイスター制度とは1953年に法制化された職業訓練制度のことです。
CPSでは、現実空間(フィジカル空間)から実データを取り組み、技術的な蓄積を使ったシミュレーションを行い、その結果を人間と機械の両方に対するガイダンスとして活用します。例えばリチウムイオン電池での不良発生率を、現在の3%から1%未満に引き下げるために必要な改善を行う場合などに使われています。
日本が追いつくための条件
インダストリー4.0は国家主導で開始されましたが、現在は民間企業中心の取り組みに移行しています。ハノーバー・メッセ2015では、シーメンスのブースが注目を集めました。シーメンスは、顧客が好みをタブレットに入力すると、直ちに生産が始まるデモを公開しました。シーメンスはドイツ南部の産業機器工場をモデルにして、インダストリー4.0を標準化するための取り組みにおいて、他の企業を先導しています。
日本の製造業が国際競争に勝ち残っていくには、ドイツに追いついていくことが必要です。日本では特定の製造業が先行して、核になっていくべきです。核になる存在の一番手は日立製作所なのではないでしょうか? 日立はドイツのシーメンスや、アメリカのGEに対抗するために海外売上の拡大を目指しており、国内工場の技術水準を海外工場に移植しようとしています。イギリス北東に日立が建設した鉄道車両工場で、この9月からIoTによるねじ締め管理を導入し、不良発生率ゼロの実現に取り組んでいます。多くの日本の製造業が日立のようにIoTを活用することで、ドイツに追いつくことが期待されます。