最後の一線でコンプライアンスを守る修羅場の現場力
社内不正はなぜ起こるのか?
社内で起こる不正。大きいものから小さいものまで様々ありますが、不正はなかなかなくなりません。
私は企業から相談を受け、どうしたら不正を防ぐことが出来るかを一緒に考えたり、そういう企業を対象に倫理やコンプライアンスの教育を行ったりしています。
今日はそれらの経験をふまえた現実を率直に書きます。
不正はなぜ起こるのでしょうか?
理由は様々ですが、不正をしたいと思ってする人はあまりいません。
実はこの不正、実際は「する」のでなく「させられる」ことが多いのです。
「納期が間に合わないとは言えなかった。無理してでも送りたかった」(A社、部長)
「社長の指示に関して、全面的に覆すのが難しかった」(B社、部長)
「上層部からの指示を断れば出世ルートから外れる」(C社、一般社員)
いずれも状況に追われ、追い込まれ、やむなくやってしまっています。
不正を起こさないためにどうすればいい?
企業が数字を追うのは必然です。
会社や上司がプレッシャーをかけてくるのもあたりまえです。
が、いくら組織人であるといっても「やっていいこと」と「やってはならないこと」があります。
もちろん、これは常識です。誰もが「それくらい分かっている」と思います。
でも、「分かっていたけれどやってしまった」というのが現場の現実なのです。
顧客や上司に逆らえずにやむなくやってしまうということがあります。不正はこの延長線上で起こります。だからこれは他人事(ひとごと)ではない、誰にでも起こりうることなのです。
そんな中で、不正を起こさないために必要なのは何か?
皆さんは分かりますか? そうです。
「きちんとノーと言う」ことです。
逃げずにノーと言う修羅場の現場力
相手にノーと言う。
言うは易しですが、行うは難しです。
特に
- 相手に貸しがあり、無下に断れない時
- 逆らうなんてありえないような誰もが恐れる相手に指示された時
- 仲が良い相手で、断るとこれまでの関係にひびが入りそうな時
不正の火種を抱えていないようなことでも、このような場合は断りづらいものです。それが不正につながる恐れがあることで、なおかつ「会社がどうなってもいいのか」「俺を見捨てるのか」などと暗に(或いは直接的に)言われたら……。
ノーと言うことは、会社に逆らうことであり、相手に逆らうこと。
不正な事案を秘密裏に運ぶのは限られた人だけの閉じた世界で行われることがほとんどであり、断るという行為は孤独で、それをする人にとっては修羅場です。
このような時に試されるのは「底力」であり、逃げずにノーと言う修羅場の現場力です。
それを発揮するには、普段から自分の胆力を鍛えておくことが大切です。
胆力のある人間は、転職先でも重宝されます。
胆力を鍛えていれば、それがあなたのアピールポイントにもなります。
これを機会に、「いざという時、自分だったらどうするか?」を想像し、胆力の強化を行ってみてはいかがでしょう。 自分を守り、会社を守り、それでいて転職にも役に立つ。
是非チャレンジしてみて下さい。
※この文章は、中沢努「人間としてのコンプライアンス原論」の内容をコラム用に書き換えたものです。