流通業界、加速するオムニチャネル戦略
―人材確保がカギに―
続々参入…… オムニチャネルをめぐる流通業界の取り組み
流通業界でオムニチャネルをめぐる主導権争いが本格化しています。
オムニチャネルの「オムニ」という言葉には、「すべての」「あらゆる」という意味があります。「チャネル」は販売チャネルや流通チャネルのこと。これらを合わせた「オムニチャネル」という言葉は、実店舗・バーチャル店、カタログ販売、テレビ通販など、すべての販売チャネルを組み合わせることで、消費者の利便性を向上させる、ということを意味しています。
現在、オムニチャネル戦略の展開において、競合他社に一歩先行している大手総合流通グループ企業のS社では、日本国内では他に例を見ない、本格的なオムニチャネルのサービスを立ち上げています。
有力食品メーカー90社と独自商品を共同開発し、約170万品目のネット通販専用商品を揃えて、オムニチャネルで消費者に商品を提供するサービスです。
今後、取扱い商品を約180万品目まで拡充することを計画しており、全国の実店舗で商品の受け取りや返品ができるよう整備しています。
また、通販での売れ筋商品を店頭で扱うことによって、実店舗の集客増にもつなげようとしています。
追撃を準備する「チャレンジャー」
マーケティング用語で、業界内第1位のリーダーに積極的に戦いを挑む企業のことを、「チャレンジャー」と言います。
先述のオムニチャネル先行企業を追撃する複数のチャレンジャー企業でも、オムニチャネル戦略を取り入れた施策が行われています。
業界大手のA社では、全国約190の総合スーパーでネットスーパーとしてのサービスも展開。NB(ナショナル・ブランド)・PB(プライベート・ブランド)を中心に、約1万2,000品目の商品をインターネット上で購入することができます。
2016年2月までに地域商品を拡充することで、取り扱い品目を現在の約2倍にあたる約2万5,000品目に増やし、コールセンター要員も2.5倍に増やすことを計画しているといいます。
また、別の業界大手企業であるF社もオムニチャネルの展開を発表しました。この企業では、2016年春からインターネットオークションを手がける大手IT系企業や、総合商社などと協力し、商品配送サービスを始めます。
インターネットオークションで落札された商品の発送や受け取りを実店舗で行うことで、来店客の増加を目指す戦略です。
オムニチャネルの成功に必要なものは? 人材の確保がカギに
オムニチャネルの進展に伴い、取り扱い品目が大幅に増えることで、顧客との接点がこれまでとは違ったものに変化しつつあります。
流通業においては、インターネット経由で注文する消費者を制御する環境を構築する必要があり、IT関係の経験や実績を持つ人材の需要は今まで以上に高まっていくことになるでしょう。
先に挙げた大手流通系企業でも、IT知識を有する人材ニーズが高まっていることを確認することができます。
というのも、このオムニチャネルを推進するプロジェクト立ち上げの責任者は、CIO(Chierf Information Officer)を兼任している人物で、なんとIT業界の出身なのです。
今後、流通業界では、オムニチャネル戦略の進展に伴って、消費者の利便性向上に貢献できるだけのIT知識を有する、経験豊富な人材に対する需要が高まっていくことが予想されます。