上場を目指すベンチャー企業経営者が求める人材とは?
株式の新規公開は6年連続で増加。今後も増加傾向に
2015年の新規株式公開(IPO)企業数は99社となりました。金融危機後、低迷を見せたIPOですが、順調に回復を続けています。
公表前には、2015年のIPOは減少に転じるのではないか、という予測も出されていました。新規株式公開企業の中に、上場して間もなく業績不振や不祥事などを生じた企業が見られたためです。
これには、東京証券取引所からも「新規公開の品質向上に向けた対応のお願い」が出されるほど大きな影響があり、証券会社や監査法人でも懸念材料となっていたのですが、結果的に6年連続の増加に落ち着いたことになります。
不安定な株式市場に対する危惧がないわけではありませんが、2016年のIPO企業数は100社を超えるという予測も示されており、今後も好調に推移することが期待されています。
足りない“経営者の右腕” 成長するベンチャー企業を襲うエグゼクティブ人材の不足
ベンチャー企業を取り巻く市場環境は非常に良好です。ベンチャーキャピタルなどの投資意欲は引き続き旺盛で、各業界の大手企業がスポンサーに名を連ねる事業計画プレゼンイベントなども、多数開催されています。将来が期待されるベンチャー企業にとっては、資金調達をしやすい環境は整いつつあるといえます。
こういった環境面からの後押しもあり、多額の資金調達に成功したベンチャー企業は、業績拡大に向け事業を推進しています。
その過程でカギとなるのが、社長の右腕となって事業を推進していくマネジメント層、いわゆるエグゼクティブ人材の存在です。
ただ、急速に事業が拡大していくベンチャー企業では、エグゼクティブ人材が慢性的に不足しているのが現状で、多くの経営者は、常にエグゼクティブ層の人材不足に悩まされているようです。
こうした環境の中、成功しているベンチャー企業経営者は、いったいどういった人材を求めているのでしょうか。
ベンチャー企業経営者が求める人材像とは
成長するベンチャー企業経営者が求める人材像を考える上で、1つ参考となる調査報告があります。
稲村雄大(芝浦工業大学大学院)および中内基博(東洋大学)両氏が、起業家研究フォーラムにて発表した論説の中で紹介されているインタビュー調査なのですが、大変興味深い傾向が明らかにされています。
新興3市場へのIPOを達成したベンチャー企業27社を対象に行われたインタビュー調査(財団法人中小企業総合研究機構、2004年)によると、多くのベンチャー企業の社長が、幹部人材の中でも特定の人物の存在が成功に大きく貢献したとコメントしているといいます。
この論説では、その他の研究の実証分析から得られたデータとして、社長の右腕となる幹部人材の存在と「売り上げの伸び」「経常利益の伸び」に正の相関があること、「競争力」「事業拡大方針」に対して有意な正の影響があることなども紹介されています。
IPOを果たしたベンチャー企業では、社長の右腕に該当する人材の存在が、会社の成長に大きく貢献している傾向があるようです。
他にも、論説から類推できることとして、ベンチャー企業経営者が幹部として求める人材には、下記のような要素が必要であることが考えられます。
経験豊富な人材
総合的競争力を高めるため、バランスの取れた戦略的意思決定を行う上で必要とされる
特定分野の専門知識を持つ人材
製品・サービスの向上を行う上で必要とされる
その他、「社長が対等な立場で経営方針について相談できる」「新たな幹部人材を獲得できるだけの人脈を持っている」という要素も、重要視されやすいといえるでしょう。
業績好調なベンチャー企業には、急成長の可能性があります。そういったベンチャー企業の一員となり、自分も会社も成長させることは、エグゼクティブ人材のキャリアの1パターンとして、非常に挑戦しがいのあるものではないでしょうか。