経営者のためのリーダーシップ論
必要なのはプラスα(アルファ)の視点?
そもそもリーダーシップとは何か?
「不確実なビジネス環境に対応できるよう、組織を生まれ変わらせる」
「未知の市場において新たなニーズを探索し、新しいビジネスを構築する」
経営者がすべきことはたくさんあります。
経営者には多様なスキルが求められますが、その中心にあるのが「リーダーシップ」です。
リーダーシップとは「他者の思考や行動に影響を与える」こと。
1991年の湾岸戦争で、アメリカ軍トップの統合参謀本部議長を務め、その後政治家になったコリン・パウエル元国務長官は「たとえ単なる興味本位であっても、他人があなたの行くところへどこへでもついてくるのなら、それはリーダーシップを身につけた証拠だ」と言ったそうです。
役職者のように、「組織から正式な権限が与えられた人」だけが発揮できるマネジメント機能とは違い、組織内の誰もが自発的に発揮できるのがこの「リーダーシップ」の特徴です。
「残念なリーダーシップ」の特徴
リーダーシップを発揮しようと頑張っている人はたくさんいますが、中には上手くいっていない人もいます。
皆さんの目から見ても、周囲から「残念な人」とみなされている「リーダー」と言われて、思い当たる人がいるかもしれません。
残念な人の行動の例として、下記のような項目が挙げられます。
- 相手を自分の思うように仕向けようと居丈高になる
- 知識をひけらかすような言動をする
- 過去の功績を過度に自慢する
- 相手の言い分を聞かず、命令や叱責ばかり
これらの行動が目立つ人は、「残念なリーダー」の典型です。
もちろん経営者であっても例外ではありません。
(1)あるところに、出世に出世を重ね、長きにわたりトップの座を守りつづける大企業の社長がいた。「老害だ」という周囲の言葉などどこ吹く風。社長は周りにイエスマンを侍らせ、わが世の春を謳歌し続けた。
(2)あるところに、一代で巨万の富を築いたベンチャー起業家がいた。
[出典]中沢努「出世する人はエゴイスト? カントの人間学」
その人の会社案内には「我が社は社員を大切にします」と書いてあったが、社員は「社長の富を生みだす道具」のごとく扱われ、誰もが疲弊しきっているのが実際であった。
経営者は“偉い人”として扱われることが多くなります。すると上の地位の者として扱われることを「あたりまえのこと」と思い込み、結果、下の者の気持ちが見えなくなる。
経営者としての自分に麻痺し、先に挙げた行動に違和感を覚えなくなると、こんなことだって起こるのです。
リーダーシップには「プラスα」の要素が必要
では、周囲から「残念なリーダー」と言われないためには、どうすべきでしょうか。
リーダーシップを発揮するには大事なポイントがあります。
リーダーシップの巧拙は【仕事上の力】と【人間としての力】の総和、で決まります。
だから、ビジネススキルや職務上の技能だけでなく「プラスα」、すなわち「人間としての質」や「成熟度」を高めることが必要です。
常に自分を客観視し、自身の発言や行動を相手(リーダーシップの受け手)の目線で確認する。そしてプラスαの強化に励めば、魅力的なリーダーシップを発揮できるようになります。
この文章は、中沢努「思考のための習作」の内容をコラム用に書き換えたものです