上場しているメーカーで活躍する
エグゼクティブの条件
上場企業における企業統治指針の影響
昨年6月から東京証券取引所の上場企業には、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を守ることが求められています。この企業統治指針は73の原則から構成されていて、株主の権利と平等性の確保、複数の社外取締役を任命することなどが含まれています。そして多くの上場企業が、企業統治指針に基づいて、積極的に社外取締役を任命するなど、その影響を確認できます。
当初は、社外取締役が特定の人材に集中してしまい、複数の企業での兼務が目立ったことから、メーカーを中心に兼務制限を設け始めています。兼務を一切、認めていない製薬会社があるほか、3社以内など具体的に社数を明示する企業が増えています。兼務を制限する理由は取締役会に出席することに加えて、議論に必要な準備時間を確保することを社外取締役に求めているためです。社外取締役に就任する場合、それを考慮することが必要になってきています。
公約となる中期経営計画
企業統治指針の影響は社外取締役の任命以外にさまざまな分野に及んでいます。大きな影響力を与える事項に中期経営計画の性格の変更があります。昨年6月以前は、中期経営計画は努力目標であり、株式市場から投資材料として吟味されることは、殆どありませんでした。しかし企業統治指針では、中期経営計画が達成できない場合には原因と対策を株主に説明すること、そして次期以降の計画に反映させることが必要とされています。つまり企業統治指針によって、中期経営計画は公約とみなされることになりつつあります。
そのためにメーカーの中期経営計画では、株主に評価されることを意識した目標設定がされ始めています。具体例として、化学品メーカーではROE(自己資本利益率)を、食品メーカーではEPS(1株当たり利益)の成長率を目標としている企業があります。ある化学品メーカーでは、ROEの目標と合わせて、M&A(企業の合併・買収)等の投資方針を具体的に明示したことで中期経営計画を発表後、約1週間で株価が10%程度、上昇しました。
株主の期待に応えるための全体最適化
上場しているメーカーは中期経営計画の具体性と達成が期待されます。中期経営計画を達成するために、組織体制を変更したメーカーがあります。
日本を代表するある会社は4月からカンパニー制を導入しました。カンパニー制の導入により、ROEやEPSについての責任をカンパニーの中心となるエグゼクティブが、持つことができるようになります。カンパニー制では事業部制とは異なり、カンパニー単位のバランスシートが作成されるためです。エグゼクティブは損益の責任を持つことに加え、投資を含むバランスシートのあり方といった全体最適を追求することが期待されます。中期経営計画が公約となるため、カンパニー制を導入するメーカーが増えることが予想されます。
中長期的な視点から全体最適の実現を通じて、株主の期待に応えていくことが求められるため、自己成長を目指す高い志を持つエグゼクティブにとって、上場しているメーカーは、格好の活躍の場になっていきそうです。