読書のススメ――
忙しいエグゼクティブほど本を読んでいる
今月、ビジネス書以外の本を何冊読みましたか? 忙しいと、本を読む時間が取れないことも多いと思いますが、最近ビジネス書以外で読書をしましたか? その場合、どんな本を好んで読みますか?
今まで自分が近くで見てきた中で、どう考えても一日24時間では足りないくらい忙しいエグゼクティブほど、幅広い分野の本を読んでいるということを、ふとした会話から知りました。具体的には、話題の著者の本や、業界の経営者同士で共通の話題になりそうなものはもちろん、文学や哲学の本、趣味にまつわるものなどです。話題が豊富で誰とでも合わせられて、さすが!と思うエグゼクティブのほぼ全員が、月に数冊はビジネス書以外の本を読んでいる印象を受けました。
実績をあげているエグゼクティブほど、本をよく読んでいる
いくつかの有名な調査で、「読書量と年収は正比例する」という結果を目にします。
例えば、日本経済新聞の2009年の調査では、「年収800万円以上の人の本代(月額購入費)平均は2,910円、400万円以上800万円未満は2,557円、400万円未満は1,914円であり、読書量は年収に正比例する。」という結果が出ました。本代に関して言うと、私が担当した中でこの人の右に出るものはいない、と感じたある日本人エグゼクティブの例を挙げたいと思います。
外資系企業出身、新しく日系IT企業の役員として転職してきた50代の上司ですが、毎日分刻みの忙しいスケジュールの中、時間を見つけては大量に本を読んでいました。「本読みの○○さん」と、同じく読書好きの男性補佐に親しみをこめて呼ばれるほどで、月に10冊程度は読んでいたのではないかと思われます。当時は2002年から2003年頃に起こったいわゆるビジネス書ブームの直前。上司の主な愛読書は日本の政治思想史の古典ともいえる丸山眞男など、比較的語彙が難解な本ばかりでした。私自身も上司を見習っていくつかの作品を読んでみましたが、お恥ずかしいことに、正直、読むのには忍耐を必要としました。同時に上司が若い時から継続してこのような本を読み続けているという事実に尊敬の念を抱いたものです。
またこの上司は、訪問先の帰りなどに社用車の運転手に大型書店に立ち寄ってもらうようにあらかじめ依頼するなど、自分でも本を入手する努力をしていました。当時は今のように便利なネット販売などありませんでしたので、書店に行くのが普通だったのです。どんなに忙しいスケジュールが続いても、書店に行く時間だけは“死守”していたのを覚えています。
本を読むことで知識の幅が広がり、マネジメントにも好影響が
エグゼクティブに好まれる本は、ビジネス書や話題の本に限定されません。むしろ自分の趣味の本、上記のエグゼクティブのように若い頃から好きなジャンルの著者の本であったりします。従って、必ずしも社内の業務に直接役立つ本という観点で選ばれているわけではありません。そうした愛読書を含む多岐にわたる分野の本を読み続けることで、普段、ビジネスに偏りがちな頭脳がリフレッシュし、新しいアイディアにつなげているのです。また、読書の話題を出すことで、本好きな社員たちの共通の話題にもなり、彼らとコミュニケーションをとることにも役立ちます。
エグゼクティブの多くは、口には出さなくとも上述したように話題の本、流行りの本は一通り目を通していますが、なぜそんなことが可能かというと、日本語でも英語でも、読むスピードがかなり速いのです。そしてこうやって頻繁に大量の本を読むことは、自分の知識の幅を広げ、新しい体験につながっていきます。経営者の立場にいる者にとって、常に新しいものに触れる姿勢は大切です。こうして読書をすることが、マネジメントに良い影響を与える結果になっているのです。