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ワークライフバランスと仕事の成果

コラム

重視されるワークライフバランス

大手企業を中心に勤務形態の多様化が進んでいます。6月にトヨタ自動車が在宅勤務の拡大を発表しました。事務職を中心に今後、人数を1万3千人程度まで拡大する可能性があります。在宅勤務の狙いはワークライフバランスにあります。子育て世代や介護に時間を取られる社員に対する配慮が在宅勤務の拡大に結びついています。トヨタ自動車以外にも日本マイクロソフト、カルビー、日本航空などの先行事例があります。先行事例では、ワークライフバランスに直結する総合職の女性の離職率の低下が確認されています。また。ワークライフバランス以外にも業務の効率など仕事の成果を高めることに貢献しており、トヨタ自動車も労働生産性を高めることを期待しています。

1年に150日休むドイツ人の働き方

在宅勤務などの勤務形態の多様化が進むなか、安倍首相は第3次再改造内閣発足後、長時間労働の是正を含む働き方改革を打ち出しています。ワークライフバランスを左右する長時間労働の是正は、日本国内の状況よりも欧米の事例に目を向けることが重要です。ミュンヘン在住のジャーナリスト、熊谷徹氏は自著で年間150日休んでいるドイツ人の働き方を紹介しています。熊谷徹氏は、ドイツと日本の異なる点として、仕事の情報の共有方法、休んでいる人に対する寛容さを挙げています。ドイツではオフィスを中心としたファイリングのルールが徹底されており、あらゆる情報の所在が共有されているため、担当者が休んでも他のメンバーがフォローしやすくなっているそうです。また街の商店を含めて国民全体がしっかり休みを取得することから、多少の不便さがあっても、あまり不満や苦情を言わない傾向があるとのことです。

長時間労働是正に必要な企業ぐるみの取り組み

ワークライフバランスの鍵となる長時間労働是正のためには仕事で成果を出すことも重要です。日本の労働生産性は2014年実績では、OECD加盟34ヵ国中21位にとどまっています。上位3ヵ国はルクセンブルク、ノルウェー、アイルランドであり、ドイツは12位です。日本のエグゼクティブが労働時間を短縮する場合、日本より労働生産性の高い国を研究する必要があります。たとえば、日本の1.5倍以上の労働生産性を挙げている4位のアメリカです。アメリカの生産性の高さはHRテックが貢献しています。HRテックとは、クラウドやビッグデータ解析、人工知能などの先進的なITを使って採用から育成、評価や人員配置などの効果を高めるための手法のことです。HRテックが注目されるきっかけは「マネーボール」という映画にもなったメジャー・リーグのアスレチックスの快進撃にあります。アスレチックスの秘訣は、選手に関する斬新な評価基準に基づくデータ分析にあります。グーグルが人事部門にデータサイエンティストという専門家を配置するなど、アメリカではHRテックを積極的に推進する企業が増えています。日本のエグゼクティブが労働生産性などの仕事の成果を高めるためには、個人の努力だけに依存するのではなく、HRテックの導入などの企業ぐるみの取り組みが期待されます。

AUTHOR山田 豊文(やまだ とよふみ)

1985年、株式会社日本能率協会コンサルティングに入社して以来、約30年間、経営コンサルティング及び人材育成に従事。2012年に独立、現在は株式会社プロセスイノベーションの代表取締役。東証一部上場企業から中小・ベンチャー企業、メーカー、商社、ITベンダー、サービス業など様々な規模や業種の企業を幅広く支援。得意なテーマは営業力革新、事業計画立案、コーチング。複数の部門を横断的にプロジェクト展開することによって、3年以上にわたる中長期な支援の実績が多い。中小企業診断士、キャリア・コンサルタント。

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