ジェネラリストとスペシャリスト、
トップ人材としてふさわしいのは?
マネジメントと言えばジェネラリスト出身者と言われているが本当にそうか?
トップマネジメントと言えば、よくジェネラリストが幅広く社内のことを理解しているので、社長はジェネラリスト出身者から選ぶものとされてきました。はたしてそれは常にそうなのでしょうか?ここでいうジェネラリスト出身者とは、「複数の分野」で一定以上の知識や技術を持ち、トータルでの経営能力を身に着けた人のことです。一方、スペシャリスト出身者とは営業、人事など「特定の分野」に優れた知識や技術を持つ人のことです。とくにどちらかに優劣があるわけではありません。
日本の製造業では、スペシャリスト出身者の役員が、いわゆる職人魂を持っているとして、好意的に受け入れられる事例がよくある、ということがありました。しかし一方で、スペシャリストは、一部門で出世をしてきたことが多いため、社内全体を見渡した発想ができにくいという点もあがります。
転職時には、自分がどちらに属するかで取るべき対策がある
自分がジェネラリストとスペシャリストのどちらであるか自覚のある人、目指す道が見つかっている人といない人とがいます。分からない場合は専門家やキャリアアドバイザーに客観的に判断してもらうことが必要です。どちらかわからない例とは、例えば、キャリアの途中でスペシャリストからジェネラリストに転向したというような場合にどのような市場価値があるのか、ということです。
市場価値のないスペシャリスト(専門のことしか頭にない事例)も市場価値のないジェネラリスト(特定の会社でのみ活用できる事例)も少なくありません。また、業界によっても、受け入れられ方が違うことを念頭に置きましょう。
優先すべきはマネジメントの徹底?それとも会社の個性?
マネジメントを徹底するならジェネラリスト、会社としての個性やカラーを出すならスペシャリストがトップとしてふさわしいとよく言われています。しかし、実際のビジネスの現場ではどうなのでしょうか。
徹底したマネジメントということでのジェネラリストの代表としては日産のカルロス・ゴーン氏がいます。スペシャリストをまとめるマネジメントがジェネラリストであるという考えのもと、徹底して欧米企業で「経営のプロ」を歴任してきたのはご存知の通りです。
ここで、スペシャリストの例を挙げてみます。歴史のある製造業など、職人気質を前面に打ちだしている企業であれば、スペシャリスト出身のトップが顧客に対して、商品開発の際のエピソードをリアルに話すことができます。最も顧客が興味をもち共感すると思われる情報を、実際に体験した人間が提供できるということは企業にとっては価値を生むものです。ただしその場合、ジェネラリスト人材が右腕として機能していることが必要となるでしょう。スペシャリストがトップでジェネラリストが右腕となった事例として特に有名なのは技術者出身の本田技研工業の本田宗一郎氏と経営面を支えた藤沢武夫氏の組み合わせです。藤沢氏が副社長としてホンダの経営面を支えることによってホンダを世界的企業へと成長させました。
ところで、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりとして選ばれた、リンダ・グラットン氏による著書『ワーク・シフト』。2015年に働き方がどう変わるかということで話題になったので、ご記憶の方も多いかと思います。
その本の中で、第1のシフトは、「『ゼネラリスト』から『連続スペシャリスト』へ」と述べています。これは、専門のスペシャリストにならないと仕事がなくなってゆく世の中になる、という意味です。トップマネジメントに関しても同様にこのシフトがはたして当てはまるのかどうか、まだわかりません。また、ジェネラリスト・スペシャリストどちらの立場を取るにしても、トップマネジメントの大前提として経営のプロフェッショナルであることが求められるのは言うまでもありません。