富裕層とワイン愛好家の集まる
ニュージーランドのワイナリー事情
ニュージーランドでのワインの位置づけとは
日本の小売店でも南半球のワインとして南米だけでなくニュージーランドワインがよく見られるようになってきました。私事ですが先月オークランドを中心にニュージーランド北島を訪問してきましたので、ニュージーランドワインの最新情報について、また、ワイナリーを訪問して見えてきた現地事情などについてお伝えしたいと思います。次回のワイン選びのご参考にしていただけますと幸いです。
まず、驚いたのはスーパーマーケットのワイン売り場の広大さ!地元最大級のカウントダウン(Countdown)というスーパーに行ったのですが、国産ワインの種類が赤白合わせて何十種類もあり、迷いに迷ってしまいます。日本と違ってまとめ買いをするためか、手軽なプラスチックボトルのワインや、2リットル箱のパック入りワインも多数ありました。
ニュージーランド航空機内のオンデマンド情報スクリーンでもワインを熱心に宣伝していましたが、ニュージーランドでアルコール飲料といえばまずワインという認識がすっかり根付いているのは確かなようです。オークランドの和食店でも産地別に何十種類ものワインリストがあるくらいで、「とりあえずビール」ではなく「とりあえずワイン」が主流なようです。
有名ワイナリーは星付きレストラン並みの設備を誇る
私が今回訪問したワイン産地は、オークランドからアクセスが良い範囲として、フェリーで35分のワイヘキ島、車で1時間程度のマタカナ、クメウといった名産地でした。ニュージーランドワインといえばソーヴィニヨン・ブランに代表されるさわやかな白ワインを思い出す方も多いでしょうが、オークランド周辺のワイナリーでは特にワイヘキ島の濃厚な赤(メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー)が有名で、他にはフルーティーな白(シャルドネ、ピノ・グリ)が人気です。各ワイナリーでは無料・有料試飲のプランがいくつかあり、気軽にテイスティングができます。また、ワイナリー併設のレストランはワインに合わせて本格的なフランス料理などを提供する店が多く、どこも高級店です。観光客だけでなく地元のビジネスオーナーや富裕層が多く集まる社交場にもなっているようでした。また、ワイナリーならではの景色の美しさから結婚式等もよく行われています。実際にオークランド近郊のThe Hunting Lodgeでは映画のワンシーンのような結婚式に遭遇しました。
ニュージーランドワインならではのおおらかさ
高級な赤ワイン産地で有名なワイヘキ島では、思いがけず、ワイナリーと(ビールの)ブリュワリーが同じ敷地内でフロアを分けて上手に共存している事例を見かけました。実は地元ではワインと並んでビールも昔から人気があり、全国に約60の醸造所と200種類以上のビールが存在するといわれています。
実際にどこのワイナリー付属レストランでも、必ずメニューにビールのオプションはありました。私たちが訪問してランチも頂いたワイヘキ島のワイナリー、タンタラス・エステート(Tantalus Estate)では2階がワイナリーとワインレストランのフロア、1階が地ビールのブリュワリーという構成でした。
2階のワイナリー付属レストランは高級フレンチレストランそのものですが、その一方で、特別に許可をもらって見せていただいた1階のクラフトビール醸造所は隣接のテイスティングフロアがクラブラウンジのような落ち着いた雰囲気。暖炉を囲むソファとバーカウンター、といったクラシックな英国調のしつらえで男性に好まれそうです。
こういったワイナリーでビールも本格的に提供するというのは他のワイン産地ではあまり聞かないニュージーランドらしいおおらかな特徴ではないかと思いました。実際に私自身オークランドの友人宅でビールを飲む機会があり、地元のドラフト、ラガー、エールそれぞれの美味しさに驚きました。
人気ワイナリーで感じた顧客第一の姿勢
今回訪問した北島のワイナリーの中ではここ1〜2年の間に経営者が変わり、ワインの良さをもっと伝えよう、という姿勢を前面に打ち出す所が増えました。たとえばブドウの品種ごとにボトルのネック部分を色分けしてカラフルで見やすいディスプレイにする、陳列棚で何がどこにあるか一目でわかるように工夫する、品があるのにポップで明るいデザインのボトルで目先を変えて親しみやすくするなど。
こうした顧客の目線に立って工夫を凝らしているワイナリーは、テイスティング担当者もそれぞれのワインについてわかりやすく説明してくれて好感が持てました。結果、テイスティング後のワインのお買い上げ率も高いように感じました。
自然体のニュージーランド人たちが真面目に作っている上質なワイン。今回の旅ですっかりファンになりました。機会があれば、ぜひ味わってみていただければと思います。