エグゼクティブに期待されるマーケティングのセンス
マーケティング3.0からマーケティング4.0への進化
マーケティングは、自分の仕事にあまり関係がないと捉えるエグゼクティブはかなりいるはずです。しかしマーケティングそのものの進化が、すべてのエグゼクティブに、マーケティングのセンスを磨くことを求める状況になってきています。そのきっかけになるのがマーケティング3.0からマーケティング4.0への進化です。
マーケティング論の第一人者、フィリップ・コトラー教授は、マーケティング3.0からマーケティング4.0への進化を主張しています。マーケティング3.0は価値主導のマーケティングといわれており、2010年にコトラー教授が主張し始めた概念です。そこから発展したマーケティング4.0を一言で表すと「オンラインとオフラインが出会った」ということになります。
マーケティングは商品中心の1.0から消費者志向の2.0、そして21世紀に入ってから生活者の価値観を尊重する3.0へと進化してきました。そしてO2Oといわれるオンライン(インターネット)とオフライン(売場や商品)の結びつきが強まる傾向を受けて、マーケティング4.0へと進化しています。
マーケティング進化の背景
マーケティングが進化した背景はIoTを含むインターネットの進歩にあります。IoTは第4次産業革命の原動力として期待されています。経済産業省の新産業ビジョン2030では、IoTによるビッグデータの共有による生産性向上が盛り込まれています。また2020年までに日本国内でIoTデータの流通市場を立ち上げる計画が進行中です。IoTデータの流通市場立ち上げは、マーケティングの進化を促進することが確実です。
またインターネットの進歩は、マーケティングの主要な要素である広告においても影響力が強まっています。今年は世界の広告市場において首位が交代することが確実です。イギリスの調査会社ゼニスオプティメディアは、今年のインターネット広告費が2千億ドル(約22兆円)を突破して、テレビを抜いて1位になると予想しています。昨年の広告市場においては1位のテレビが36%の市場シェアでしたが、今年はインターネットの市場シェアは37%になると予測されています。
身近な存在であるデータを活用したマーケティング
IoTやインターネット広告の拡大はクリック単価、オファー応諾率などのデータの重要性を高め、かつデータの活用を容易にします。クリック単価とは、インターネット広告に要した費用を総クリック数(アクセス数)で割った金額のことです。オファー応諾率とは、顧客候補に送ったオファーのうち、応諾してくれたオファーの割合のことです。
マーケティングの効果を検証して、高めていくためにはクリック単価やオファー応諾率は重要な指標になります。またエグゼクティブにとっても、ネット上でのクリックやオファーの受け取りは日常業務の中で、ごく当たり前のことになっており、従来よりもマーケティングは間違いなく身近な存在になっています。
データを有効に活用するには、マーケティングの3つの側面(エクスターナル、インタラクティブ、インターナル)を結びつけることが必要です。エクスターナル・マーケティングとは自社と顧客との関係を強化するための側面のことです。インタラクティブ・マーケティングとは自社社員と顧客との関係を強化する側面のことです。そしてインターナル・マーケティングとは自社と自社の社員との関係を強化する側面のことです。
すべてのエグゼクティブにとって必要なマーケティングのセンス
顧客満足度を高めるにはインタラクティブとインターナルの側面が重要です。この2つの側面が充実してこそ、エクスターナル・マーケティングが充実して、その結果として顧客満足度が高まるためです。インタラクティブとインターナルの2つの側面を充実させるためには、望ましい組織文化をつくり上げることが必要です。インターナル・マーケティングが充実して社員1人ひとりが自社に高いロイヤリティを持つこと、そしてインタラクティブ・マーケティングが充実して、情熱を持って顧客対応に取り組むことは、社員の価値観や行動規範としての組織文化の影響によって実現されます。
望ましい組織文化をつくり上げるためには、エグゼクティブがマーケティングの3つの側面を理解した上で、社内のメンバーに働きかけていくことが必要不可決です。マーケティングの3つの側面が、うまく結びつくような組織文化をつくり上げることによって、顧客満足度を高めることになります。そのためには、すべてのエグゼクティブがマーケティングのセンスを身につけることが期待されます。