「積極的に」休む~ 適度な運動で心身のリフレッシュ
休みの日に、疲労解消として「じっとしている」ということはありませんか
エグゼクティブ、管理職として分刻みの多忙な毎日を送っていらっしゃる方は多いかと思います。
時差のある海外とやりとりの発生するような業務でしたら、早朝深夜の電話やオンラインでの会議などもあるでしょう。そうでなくても責任ある立場ゆえにプレッシャーで、平日は朝から晩まで仕事のことで頭がいっぱい、休息や運動に時間を取ることはなかなか難しい、という方も多いのではないでしょうか。
やっと訪れた週末の休日は疲れてしまって運動する気も起きない、ひたすら寝ていたいということもあるかもしれません。しかし、こういった「じっとしている」という場合の休養の効果はそうでない場合と比べてどうなのでしょうか。
スポーツ生理学を専門とし、医学博士でもある帝京平成大学ライフ学部准教授の藤牧利昭先生の説明によると、「疲労回復のためには熟睡が必要なことは言うまでもありません。しかし単にゴロゴロしたり、眠っているようで眠っていないような中途半端な状態で過ごしたりしても効果はないし、むろん血行促進や筋肉のケアにもならないわけです」ということです。では、疲労回復に最も効果的な方法とは何でしょうか?
アクティブ・レストという言葉をご存じですか
ここ3~4年でよく聞くようになったアクティブ・レストという用語。本来はトレーニングやフィットネスの現場で使われる言葉で、普段のトレーニングメニューよりも負荷を低くして簡単にしたエクササイズを休息日に行うことだそうです。
前述した、疲れてしまって動きたくないビジネスパーソンの身体には、疲労のアンバランスが生まれていると言えます。脳や目ばかりを酷使し、筋肉や骨はあまり使わない。体より心の疲れを強く感じている人も多いのではないかと思います。ただ、心身は相関していて、心の疲れは体に影響を及ぼし、その逆もまたしかりです。そんなとき、アクティブ・レストによる『積極的休養』が有効になります。
アクティブ・レストとは、簡単にいえば、横になったりして完全に休むのではなく、むしろ体を動かして疲れを軽減する方法なのです。
なぜアクティブ・レストが評価されているのでしょうか
アクティブ・レストは、もともとアスリートの練習計画で使われる考え方です。アスリート練習計画の中でハードな日、軽めの日、そして休養日を設定します。そして休日にも適度に身体をほぐすような運動を行います。そうすることで疲労回復が早まるからです。
軽い運動とはどの程度の運動かというと、例えば、10~15分程度のウォーキング、ジョギング、とその後のクールダウンのためのストレッチなどが挙げられるそうです。
アクティブ・レストの狙いは、全身の血行をよくすることと筋肉のケア。軽めの有酸素運動で呼吸循環器系を活発化し、疲労回復を早めるということです。
このように、知らず知らずにたまっている疲れを軽い運動でこまめに解消できるため、気づいたときに行ってパフォーマンスを高く保ちやすいという点も人気がある理由の一つと考えられます。
身体への最適なアプローチが精神的ストレスにも効果的な理由とは
適度な運動により脳内物質のセロトニンの量が増えるという調査結果があります。
近年の有名なものではミルコ・ウェグナー氏が率いるスイスのベルン大学・スポーツ科学センターを主とした研究チームの調査があります。ここでは、運動が不安障害とうつ病に与える影響に関する過去の4万人に及ぶデータについて調査しました。
研究結果ではウェグナー氏とドイツのハンブルク大学医学部の研究者が共同で、運動や身体を動かすことは抑うつ症状の軽減に効果的であり、抗うつ薬と似た作用があると結論づけ、2014年に科学雑誌「CNS & Neurological Disorders – Drug Targets」で発表しました。
抗うつ薬は本来、脳内伝達物質であるセロトニンの分泌量を増やし、沈んだ気持ちを盛り上げ、情緒バランスを整える働きをします。
つまり、運動によってセロトニンが増えることによって心が落ち着き、爽やかな気分になるということが明らかにされているわけで、アクティブ・レストは心の疲れにも効果が期待できるというわけです。
軽い運動が心身のパフォーマンス向上につながる、一石二鳥ともいえるアクティブ・レスト。もしもまだでしたら、生活の中に少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。