穏やかな人こそが、したたかなデキる人
トップセールスの方の、第一印象は普通の人
仕事を通じて、社内や取引先様などの多種多様なビジネスパーソンに接して、気づいたことがあります。それは、製造業や販売代理店などのトップセールスの方には意外とおだやかなタイプの方が多いことです。
セールス、営業の担当者、というと、どうしても元気な印象を思い浮かべることが多いものです。私が勤めていた製造業の企業では、営業に配属されるのは元気なアグレッシブタイプというイメージが定着していました。営業担当者の電話の声がデスクから十数メートル離れた私の席まで聞こえ、「○○さん、今日も元気で絶好調ですよね」という言葉が社員の間でもかわされるほどでした。そんな個人的な経験を通じて、元気なのが営業担当者の役目、と勝手に感じていました。
ところが、一方で、取引先企業のセールスの責任者のエグゼクティブの方から感じられるのは、穏やかさ。というよりむしろ、失礼ながら本当に普通の方、という印象でした。華々しい成果を出しつづけつつ、穏やかで普通の印象というギャップに興味を持ったのを覚えています。
企業トップも穏やかな人が多い印象
ところで、元気な印象といえば企業の経営者に関しても一部にはそんなイメージがあります。ときに、個性的な創業者経営者の方がパフォーマンスなどでメディアをにぎわすこともよくありますが、そんな個性的だと評判の経営者の方でも直接お目にかかると意外なほど穏やかな方であることが多いと感じます。
穏やかにみせているのはパブリックイメージを意識した戦略なのでしょうか。
たとえば、有名な方ですとソニーの平井社長などはジェントルマンのイメージを崩しませんし、フェイズブックのCEO、マーク・ザッカーバーグなども2017年5月のハーバード大学での演説などを見ていても、持ち味の元気さがありながらも穏やかさがにじみ出ています。
経営トップが穏やかな印象であることのメリットは、従業員にとっても、取引先、その他多数、消費者にとっても余裕と安心感を与えるということではないでしょうか。会談相手に対して適切なジョークをいえるのも余裕があるからこそです。
なぜ、業績が良い会社のエグゼクティブは穏やかなのでしょうか
では、そんな経営トップの「穏やかさ」と企業の業績とに相関関係はあるのでしょうか?
私の答えはYesです。なぜでしょう?
経営者にしてもトップセールスにしても表面は穏やかさを保ちつつも、裏では実は戦略的に着々と準備をしているという事実を知ったからです。
第三のCはcontrol(コントロール)。自分の考えや行動で状況を打開できると信じ、冷静に振る舞う姿勢です。景気動向や風評被害など他責に近い状態でも、自分のベストをつくせば状況は打開できるという気概を持ちましょう。
それは 『トヨタトップセールスレディが教える 永遠にトップをいくためのセールス術』(幻冬舎)中野 麻由美著 という書籍をすすめられて読んだことがきっかけです。
トヨタ自動車の販売店で直販・割賦販売台数全国1位という圧倒的な実績を上げつづけているセールス担当者の中野麻由美さんは、驚くほどの徹底した戦略を立てて、顧客お一人おひとりにどのようなご提案をするかを綿密に計算して、すべての日々の行動に落とし込んでいます。
また、私の秘書時代を思い出すと、上司であるトップ経営者は非常に綿密な準備をして(その過程では秘書にもゲキが飛びます)、その準備のかいあって、公式な場ではいつも余裕で穏やかなのです。すべては戦略的な完璧な準備の結果です。
業績の良い会社のトップは穏やか、という印象は、よほど人任せにしているトップでないかぎりは、準備万端にして戦略的に事業を進めているということの表れでもあります。
穏やかさを前面に出すのはしたたかな戦略ともいえる
上述したトヨタのトップセールス、中野さんは穏やかで明るくお客様に接しながらも、非常にしたたかな戦略を取っていることがわかります。例として、新車の買い替えをおすすめする場合でも、「お金がない」「いまの車が気に入っている」といった、買わないための理由づけを相手にさせません。
ではどうするかというと、現在の相手の状況(車の状況、車検の予定、家族構成、趣味など)を分析、月々の経費まで計算して、相手にとっての買い替えのメリットをお伝えするのです。ここまで、切り返しの内容まで考えたうえで初めて電話をかけるという手法にはうなるしかありません。
このように、自分にできることを淡々と行って準備して結果に結びつけていくことは、自分を信じて努力する習慣がついている方には簡単なことかもしれません。
そして、経営者にしてもトップセールスにしても穏やかさを前面に出すことの理由としては、これだけの戦略・準備が前提としてある、ということがよくわかります。