エグゼクティブの手にかかると“ミラクル”が起きるのはなぜか
エグゼクティブに報告すると、目の前の問題点が解決
私が役員秘書として勤務していた頃、上司であるエグゼクティブと会話をすると、たちどころに問題解決が行われて、やや大げさな表現ではありますが「ミラクル!」と感じたことが多々ありました。
秘書としてスケジューリング上起こるトラブルや取引先とのやり取りでの中で発生する様々な問題、どうにもこうにも解決できないことに頭を抱えながらエグゼクティブ上司に報告する機会が多々ありました。ところが、報告の途中で質問や提案に従って会話を進めていると、いつしか問題がうそのように解決してしまうのです。
一つ、分かりやすい例をあげてみます。私が勤務していた外資系企業で、ある時緊急の社内会議を行うことになりました。海外本社の重役にも電話で参加してもらう非常に重要な会議です。
緊急かつ重要な案件で、時間や場所に関するミスが許されないことがひしひしと伝ってきます。そんな中、参加者のスケジュールを合わせつつ、大至急で用途に見合った会議室も探さなくてはならないので必死になっていたことがありました。
ところが、スケジュールを優先するとすでに、その時間には重要な取引先が会議室を使うことになっており使うことができません。この皆が都合のつく開始時間にこだわるなら、非常にコストがかかる社外の会議室を利用する必要があります。
もう外部会議室を使うしか手はないだろうと思い込んだ私は、上司に恐る恐るおうかがいを立てました。ところが、上司は「この案件は、電話会議で済むのだから各自が自分のオフィスから参加してもらおう。東京オフィスでも、そういう事情なら会議室を無理に取らなくてよいですから」と私に告げたのです。ということで、大慌てで探しあてた外部会議室を使わずに済みました。
秘書が、時間に合わせた手配をするために「とにかく会議室を手配しなければ!」と血まなこになっていても、当の上司は「全員が話をできること」を優先し、会議室手配は不要との判断を下したのです。
これは、小さな例ではありますが、このように目からうろこが落ちるような例は非常に多く、その度に、驚いたり感心したりしたものです。
エグゼクティブの視点は一般社員とは違う
思いもよらなかった解決策を示されることが続くと、そのような考えに至った経緯を知りたくなるものです。
なぜエグゼクティブは常に、誰に対しても本質をとらえた視点を持ちえるのでしょうか。そしてある時、「メタ思考」という言葉に行きつきました。
これは、ご存知の方も多いでしょうが、物事を一つ上の視点から客観的に眺めてみることを指します。そして、「そもそも何が問題なのか?」ということを自覚することが「気付き」の第一歩として考えられます。
エグゼクティブは知識や経験値のアウトプットに長けている
問題解決法でよく使われるのが、一つの問題をステップバイステップに分けて考える手法です。
そのステップは、「問題の認識」、「改善点の特定」。「解決手段の選択」、「解決手段の適用」そして「改善効果の評価」。問題解決のコツは、事例でもあげましたが、固定観念から離れて、本質をとらえ、本質から新たな答えを導き出すことなのです。
学んだことを生かすセンスが求められる
エグゼクティブの問題解決法が、なぜここまで部下や秘書に驚きを持って受け止められるのでしょうか。
エグゼクティブの中でも大きく分けて、問題解決法を部下に示す場合に意識して自己演出しているタイプと、自然に部下にあまりアピールせずに問題解決を行うタイプの2タイプが見受けられますが、両者に共通しているのがメタ思考です。
問題解決に際して通常の一つ上の視点で考えるメタ思考では、まず「問題そのものが妥当なのか?」について考え始めます。「そもそもこの問題が解くべき問題なのか?」を確認してからでなければ努力が無駄になり、望まれる結果につながらないことをまず考えるのです。
まさに、前述した「会議室がないと秘書が言っているが、会議室は本当に必要なのか?」という事例がこれに当てはまります。
そして、このメタ思考のために必要な問いかけが「なぜ?」です。
「なぜ、何のためにこの仕事を行うのか常に考えなさい」、と私自身上司から常に言われ続けてきました。
目的の確認=「なぜ?」というのは視点を一つ上げる、メタ思考のためのキーワードであるのです。
常に「なぜ?」と問いかけることを忘れずにいることが、高い視点を持ちつつ、部下に「ミラクル」をもたらすために非常に重要な要素であるということなのです。