活況を呈するシニア層の転職と大競争への対応|2017年|ニュース&コラム|転職・求人はマイナビ エグゼクティブエージェント
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活況を呈するシニア層の転職と大競争への対応

コラム

エグゼクティブを含むシニア層の転職増加

転職市場が活況を呈しています。有効求人倍率が1.50倍以上で正社員の有効求人倍率も1.00を超えています。正社員の有効求人倍率が1.00倍を超えるのは、厚生労働省が「一般職業紹介状況」として集計を開始した2004年以来、はじめてのことです。また、総務省の「労働力調査」によると、年齢別転職実績では45歳から54歳は50万人以上と過去最高の人数を記録しています。これも記録をさかのぼれる2002年以降で最多です。昨年1年間の転職者は総数で306万人と金融危機前の水準に戻っており、45歳以上の構成比は3分の1以上になっています。

求人ニーズが旺盛な建設業界では、今年に入ってからも40歳代から50歳代を積極的に採用しています。建設機械レンタルの大手企業では、今年に入ってから中途採用した人数のうち、6割以上が40歳代から50歳代になっています。

また地方企業も積極的に45歳以上の人材を採用しています。広島県内に本社を持つ電子機器メーカーが、IT業界などで活躍した経験を持つ47歳のシニア人材を副社長に迎え入れた事例が日本経済新聞で紹介されました。エグゼクティブを含む、こうしたシニア層の転職が増加している背景には、大競争と呼ばれている競争の激化があります。

これまでの企業間競争とは、何が違うのでしょうか。

ネット通販を中心とした流通における大競争

大競争に突入している業界の代表に流通業界があります。流通業界ではネット通販を中心にした大競争が繰り広げられています。日本のネット通販は低価格に特徴があります。マサチューセッツ工科大学のロベルト・カバロ准教授の調査から、日本ではネット通販の価格が店頭価格より13%低く、世界で最も低価格であることが確認されています。国内ネット通販の売上実績は2010年以降、2倍に拡大して20兆円に迫る成長を見せています。2012年にはコンビニエンスストアの売上を、昨年はスーパーの売上を上回りました。こうした売上成長の原動力は低価格にあるとされており、日本経済がデフレから脱却できない理由の1つにもなっています。

すでにアメリカでは、ネット通販を巡り大競争が展開されてきました。アメリカにおいては、ネット通販は主に専門店から顧客を奪うことで成長しています。6年前には書店第2位のボーダーズが経営破綻、今年の春には家電量販店のラジオジャックが2度目の経営破綻に追い込まれ、9月には玩具最大手トイザラスが破産申請をしています。また衣料品ではGAP(ギャップ)が3年間で傘下の約200店を閉鎖することを発表しています。

いずれも、同業他社とのシェア争いではなく、新たに登場したネット通販によって窮地に追い込まれました。同じ業種のなかだけを見ていては、戦略的に対応できなくなっているのです。

自動運転を巡る大競争に突入した自動車業界

今年に入ってから、本格的な大競争に突入したのが自動車業界です。自動車業界では自動運転を巡り、グーグルやアップルといったIT企業が攻勢を強めています。日本、アメリカ、ヨーロッパが準拠しているアメリカ自動車技術協会では自動運転の段階を運転支援、部分運転自動化、高度自動運転、完全自動運転に分けています。自動車メーカーは、自動運転の実用化を運転支援から段階的に開発を進めているのに対して、IT企業はいきなり完全自動運転をめざしています。グーグルは500万キロに及ぶ運転経験や周囲の画像データをAIに学ばせるような手法を駆使して、自動車メーカーに対抗しています。

トヨタ自動車はグーグルなどのIT企業との自動運転実用化に向けた開発競争を踏まえて、前例のない戦いに足を踏み入れたことを宣言し、さらに勝ち抜くために電気自動車の基幹技術開発を加速させようとしています。具体的には自前主義から脱却して、マツダ、デンソーとともに新会社を設立して開発のスピードを上げようとしています。

従来は手を組まなかった企業、業種とも、前へ進むための協力を模索する動きが出てきたのです。

大競争への対応で期待される先見性と大局観

流通業界や自動車業界の後を追って、多くの業界が大競争に突入する可能性が高まっています。大競争に対応していくためには、エグゼグティブをはじめとするシニア層には先見性と大局観を発揮することが期待されます。

先見性や大局観を発揮するには、近視眼に陥ることなく業界の将来を見とおすことが必要です。そのためには事業のドメインを見直すことが有意義です。事業のドメインは顧客(誰に)、提供価値(何を)、提供手段(どのように)の3つの要素から見直すことができます。事業のドメインの見直しは、業界の将来を見とおすことに役立つほか、異業界からの新規参入に対抗するために幅広く協業相手を探して、オープンイノベーションを推進するといったアプローチからも先見性に結びつきます。

自動車業界の場合、移動ニーズを持った人に、出発点から終着点まで少ない負担で移動する手段を提供することが、事業のドメインを見直すことになります。さらに自動運転や安全面などでIT企業と協業してオープンイノベーションを推進することもありえるはずです。

同業他社とのシェア争いで企業体力が鍛えられていた時代は過去のものとなりました。異業種からの優秀人材を獲得できる機会も増えています。そうしたチャンスを活かし、先見性の発揮によって市場をつくり、大競争の波にも乗って対応できる企業が生き残ります。前例のないところを先駆けていくには、異なる業種との連携も加速するでしょう。業界にも企業にも、そして組織に影響を与えるエグゼクティブにも、先見性に基づいて、異なる業種、業界のことを気にかけていく視野の広さが求められているのです。

AUTHOR山田 豊文(やまだ とよふみ)

1985年、株式会社日本能率協会コンサルティングに入社して以来、約30年間、経営コンサルティング及び人材育成に従事。2012年に独立、現在は株式会社プロセスイノベーションの代表取締役。東証一部上場企業から中小・ベンチャー企業、メーカー、商社、ITベンダー、サービス業など様々な規模や業種の企業を幅広く支援。得意なテーマは営業力革新、事業計画立案、コーチング。複数の部門を横断的にプロジェクト展開することによって、3年以上にわたる中長期な支援の実績が多い。中小企業診断士、キャリア・コンサルタント。

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