エグゼクティブにとっての“ノミュニケーション”の新しい形とは?
“ノミュニケーション”と呼ばれる飲み会は時代遅れ?
ここ10年ほど前までは、駐在員として赴任してくる外国人エグゼクティブには、まず日本人スタッフや秘書から、日本企業での「ノミュニケーション」の必要性を説明する儀式のようなレクチャーがしばしば行われていました。
企業内での会議や研修の後にもたいてい懇親会・打ち上げなどが予定されていましたし、ここでは、日常エグゼクティブと接することの少ない若手スタッフも、外国人含む上司たちとざっくばらんに話ができる貴重な機会でもあったためです。
しかし、ここ10年ほどで特に企業内の飲み会や少人数での打ち合わせを兼ねた飲食の捉え方が大きく様変わりしてきたのではないかと感じることが多くなりました。
社外トップとのフォーマルな接待は特別な例外として、内輪の飲み会、すなわち社内・チーム内・一対一の場面で、「ちょっと一杯」で気持ちをほぐして話をする場面は意外とあるものです。私が接してきたエグゼクティブの皆様は、努力や工夫をしつつ家族も大事にしながらノミュニケーションを上手くこなしてきたと感じます。
特にさすがだなと思ったのは、特に外国人男性のエグゼクティブの場合、部下の慰労などの場合にパートナーがいる方へは、ご夫婦(カップル)単位で声をかけます。自分の奥様もつれてきますので、合計4人でフォーマル過ぎないところへ食事に行くパターンとなりますが、部下(日本人)の配偶者、特に奥様にとっては、上司が直接ケアしてくれたということや自分の夫がどんな仕事をしているのかを垣間見る良い機会となり、大変好印象となるようです。
子育て世代エグゼクティブはあらゆる工夫をして接待に挑んでいる
さて、時間に追われるのは外国人・日本人問わず子育て世代のエグゼクティブの共通事項かと思います。お子さんが小さいエグゼクティブの多くは、可能な限り早く帰宅するためのさまざまな工夫をしています。
たとえば夕方から夜に行われる飲み会の代わりに、朝のコーヒーやランチでの会食など、朝型・昼型に変更する動きも見られます。
家族を大切に、ワークライフバランスを考慮しつつも、必要な人とは必要なタイミングで会いたい。そんなすべてを可能にするために、「私はランチョンミーティング(luncheon meeting:昼食をとりながらの会合)を最もフォーマルな会食と位置づけている」と仕事関係者に意思表示をしていたアメリカ人上司もいました。
お酒の席にこだわる必要がなくなっている背景とは
現代社会ではエグゼクティブだけでなく、あらゆるビジネスパーソンが常にネットやSNSで仕事関係者含む誰かとつながっている状況となっています。わざわざ飲みに行く時間をさくよりメールで会話したり仕事の相談をしたりする人たちも増えていると感じます。
また、上司・部下とも仕事に追われて余裕のない職場も多く、時間を割いて飲みに行くことに対しては、デメリットしか感じない人が多いという考え方も増えてきています。
旅行代理店JTBで最年少課長となり数かずの事業を成功に導いてきた人材育成コンサルタント、田原洋樹さんは、オンラインコラム『課長のための「やらない」教科書』のなかで次のように述べています
酒の力を借りてしか、部下とコミュニケーションが取れない、あるいは、本音で語り合えない課長は、日頃の職場でもたいしてマネジメント力を発揮できていない、と私は考えます。
プロであるならば、日中の勤務時間内で、部下との人間関係も、情報共有もすべてうまく行なうことが求められるのです
エグゼクティブならではの新しいノミュニケーションスタイルとは
そうはいっても、エグゼクティブの皆様にとって飲み会や会食への参加が立場上求められることは多いはずです。しかし、すべての飲み会にフルに参加していたら体がいくつあっても足りません。そんなときの切り札、主に外国人エグゼクティブの一対一の面会時によく行われるのは、バーで一杯だけ飲みつつ短時間で必要なキャッチアップだけして切り上げる(1軒だけで終わらせる)パターンです。ほぼ初対面の相手、まだよく知らない相手とまずは話をしたい場合にもよく取られる手段です。
たとえば、外資系企業が多い六本木ヒルズ内にあるグランドハイアット東京にあるオークドア・バーはホテル内で待ち合わせにわかりやすく、好まれるようで、私が担当したことのあるアメリカ人上司は「夕方にドリンクに行く」といえば自宅にも近い六本木のオークドア・バーで5時、というのがほぼお決まりのパターンでした。
ほかに人気があるのは、新宿のパークハイアット東京のニューヨークバー、丸の内のパレスホテル東京のロイヤルバーなど。地の利が良くアクセスが良くサービスも良いホテルのバーは特に好んで利用されている印象です。